釣りをやめたくなる釣りの本
昭和中期の文豪井伏鱒二の小品集に「川釣り」岩波書店という本があります。しばらくぶりで書棚から取り出して1晩読み返しました。普通の釣り本と異なり、釣技や沢山釣れたうれしいな、というようなことは一切ありません、釣行での出来事が主な内容です。初版は1952年(昭和27)、釣り宿が大水で流される話からわさび泥棒、強盗事件そのほかみんな暗い話、そして当人はさっぱり釣れない。これを読んでいる自分もだんだん暗くなり、釣欲が失せていくのが分かります。雨の日の釣り師の本として最適でしょう、釣りに行けない苛々がおさまります。
冒頭の短文です。
今日はさっぱり釣れない。 おとりの鮎も 一ぴき曳きころし 1ぴきは逃がした。
でも釣りたい。 糸のさきに 石ころを結びつけ こうして釣る真似をする
ごつごつ ごろごろ まさに手応えがある。 カワセミのやつ 羨ましそうに見ているぞ。
開高健がその後お付き合いをするようになりましたが、流石の彼もまさに「敬して遠ざける」ようでした。「先生はそこの知れない雌ねじのような人でだまって隣で飲んでいるんだがこちらの精気を吸い取られてしまう」。「あんな酒飲みの化け物と一緒に飲んだら飲み殺されてしまう、担当の編集者が何人そうなったことか、こんなこと言うと先生はとても怒るけど」
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